高齢者と後見制度

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先日、妻が所用で乗った話好きのタクシーの運転手さんからこんな話を聞いたそうです。

ある日、その運転手さんが一人の高齢の女性を乗せたときの話です。話し好きの運転手さんだったからか、そのご老人と車中話をするなかで、(細かい事情は不明ですが)なんでもご子息が急に必要になった100万円をそのご子息が勤める会社の上司に渡すため、その上司に指定された北千住駅まで行くとのこと。

運転手さんは、目的地に辿り着くまでに車中から見えた警察署に寄るようにと、そのご老人を説得したものの、ご当人は「息子に恥をかかせるからいやだ」の一点張りだったそうです。

結局、3か所目の警察署を通りかかったところで、そのご婦人は運転手さんの説得を受け入れ運転手さんと共に警察で事情を説明し、寸でのところで事なきを得たそうです(後日、その運転手さんは、警察から表彰されたそうです。)。

そのご婦人が、果たして認知症であったかどうかは不明ですが、認知症ではなくとも、オレオレ詐欺の巧みな話術にうまくはめられご子息の身を案じることに夢中になり、冷静な判断ができなかったのかもしれません。

私自身、そのような詐欺の手口に引っ掛からないという自信は、実のところありません。

まして、認知症の兆候のある方などは、オレオレ詐欺でなくてもその財産を毀損する様々なリスクに晒されている、といえるかもしれません。

たとえば、成年後見制度はそのような方々の「判断能力を補うことによって、その人の生命、身体、じゆう、財産等の権利を擁護するという点に制度趣旨」がありますが(「成年後見制度利用促進基本計画 2 成年後見制度利用促進に当たっての基本的な考え方及び目標等 (1)基本的な考え方」より)、国・地方公共団体、関係諸機関等の努力にもかかわらず、様々な事情から、現状ではそのような制度趣旨が十全には実現できていません。

財政上の制約、ご本人の財産状況、ご家族の事情等々、様々な背景が考えられます。そのような現状ではあれ、現在後見人の研修を受講している私としては、専門職後見人としての自覚、知識、経験、更にはあくまで被後見人が支援をしている一個の人間として敬意をもって接することの大切さと困難さを自覚していきたいと思っています。

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